Special Feature
2025.12.01
アイドルとして、ある人生を羽ばたく――池田瑛紗個展『Wings:あひるの夢』インタビュー
乃木坂46の現役メンバーであり、東京藝術大学に在学中の池田瑛紗が、神保町New Galleryにて初個展『Wings:あひるの夢』を開催する。アイドルとしての日々を綴ったブログを、アーティストとしての自身が再構築するという本展。映像、写真、テキスト、ドローイングといった複数のメディウムを用い、彼女のアイデンティティがどのように交差し、表現されているのか。その制作背景とコンセプトについて、本人に話を聞いた。

美術一筋の人生から、あひるのままアイドルに
ー池田さんは幼少期からずっと絵を描いていたそうですね。「美術の道に進もう」という考えは、どのように培われていったのでしょうか?
逆に、美術以外の道はなかったんです。小さい頃からずっと絵を描くのが好きで、むしろ絵を描く以外に得意なことがなにもなかった。喋ったり歌ったり、人前に立つようなことは全然やってこなかったので、「自分が仕事に就くなら、美術だろうな」と自然に思っていました。母や父も、「この子は美術の道に行くんだろうな」と思っていたはずです。
でも、藝大を目指して浪人していた時期に、ふとしたきっかけで乃木坂のオーディションを受けたんです。アイドルになれたことは、それまでの自分にとってはとても意外で、「こんな人生もあったんだ」と思いましたね。
ーある意味でイレギュラーな選択であるアイドル活動と、かねてからの美術分野への関心が交差する今回の個展ですが、まずタイトルになっている『Wings:あひるの夢』について伺います。あひるというモチーフには、どのような想いが込められているのでしょうか?
今回の展示をつくるにあたって、原点を探すために自分のブログを読み返したんです。すると、昔の私は自分を“あひる”に見立てて「羽ばたく」とか「成長する」といった内容のブログを書いていました。乃木坂に入ったばかりの頃の私が、自分自身に重ねていたモチーフなんです。
ーあひるというと、飛べない鳥であったり、童話の「みにくいアヒルの子」であったり、ある種の劣等感を連想させるモチーフですね。
加入当初は本当に劣等感が強かったんです。他の子たちはみんな歌やダンスの経験者で、完全にゼロからのスタートはおそらく私だけ。だから「なんでこの子がここにいるんだろう」と思われないよう、必死でした。
私の行動の原動力って、いつも劣等感や焦燥感なんですよ。アイドル活動だけでなく、創作活動についても同じです。なにかを乗り越えたと思ったら、また新しい焦りが生まれてくる。よく周りから「生き急いでるね」って言われます(笑)。焦っていない瞬間がないくらい、いつも焦っています。
ーその原動力の象徴が翼であり、あひるなんですね。ちなみに池田さんはラバーダックを56羽持っているのだとか。
あ、今回も持ってくればよかった(笑)。あひるの人形は受験期に絵を描いているとき、片手でずっとニギニギしていました。集中しすぎると空いた手をギュッと握ってしまって、作品を汚したり手を切ったりすることがあったんです。だから片手にあひるを握って、助けてもらっていました。

