向き合って「みとめる」ための写真展

ー今回の写真展のような作品撮りと「みくふぉと」には、なにか差異はありますか？

金村美玖：明確に違うわけではないのかな。もちろんこれまで公開してきたものと作風が違うとは思いますが、それも「みくふぉと」の一部ではあるのかなって。

考えてみたら今回だって、作品を意識して撮影し始めたわけではないんです。「これを撮りたい」とかじゃなく、ふと「やらなきゃ」って思って旅を始めたんですよ。だから、その時々に行った場所で自分の力量を確かめるために撮ってみて、というのを繰り返して作品集になったという感じで。

ー「やらなきゃ」というのは？

金村美玖：私、時間がありすぎるといろいろ考えすぎて、よくない方向に向かってしまう癖があって。そんな時に自分と対峙できる場所に行って、せっかくなら写真を撮ってこよう、というのが始まりです。

みなさんも普段の生活の中でダウンな気持ちになる時があると思うんですよ。自分を責めちゃったり、どん底のような気持ちになっちゃったり。この作品たちはそんな気持ちに寄り添うようなもので、だから写真展には「みとめる」というタイトルを付けました。

ー金村さんがご自身と対峙した記録として、2023年冬から2024年春までの旅先（北海道、静岡、神奈川、長野、広島、青森）のセルフポートレートとランドスケープが並んでいるのですね。

金村美玖：その場の雰囲気を感じてほしいので、最後には映像作品も用意しました。そんな風景の中に鏡も額装していて、私の旅の追体験じゃないけど、来場者がじっくり自分と向き合うような時間になればいいなと思います。

ー鏡を置く意図について、詳しく教えてください。

金村美玖：自分と向き合うことって大変なことだし、自分の顔をわざわざ見たくない時もあります。けど、今回はかなりベーシックな展示になっているので、さらっと見ちゃうこともできるのかなと思うんです。

旅ごとに1000枚くらい撮ったものの中から、ストーリー性や感覚的なバランスを考慮して、見ていて気持ちのいいものを数点選んでいるんです。セレクトは引き算、引き算のイメージですね。だからこそ、ひとつ面白い仕掛けとして、「みとめる」というテーマにもぴったり合うようなモチーフとして、鏡を置くことにしました。

ー今回の展示に関してインスピレーションを受けた写真家はいますか？

金村美玖：川内倫子さんの展示を見に行きました。しっかり写真を見られるようなシンプルな空間になっていて、私も初めての個展なので、参考にさせていただきました。それから私の作風って、写実的というよりは抽象的だと思うんですけど、そこも影響受けているかもしれませんね。