Special Feature
2024.11.11
オアシスの30年、そしてこれから――ジル・ファーマノフスキー&河村康輔「Oasis Origin + Reconstruction」インタビュー
ジル・ファーマノフスキー × 河村康輔 対談
――おふたりのコラボレーションが決まった時、どのように感じましたか?
ジル:まず、河村さんについて調べました。そして素晴らしいと思いました。私自身、アートスクールで3年間グラフィックやテキスタイルのデザインを勉強していたので、アートにはすごく関心がありますし、私の作品に新たな解釈を与えてくれて感謝しています。
河村康輔:僕の場合はずっと見てきた写真なので、嬉しいだけでなく、恐縮というか、「本当に触らせてもらっていいのかな」と思いました。もう、怖かったっす(笑)。
ジル:ハハハ(笑)。
――ジルさんにとって、特に印象に残った作品は?
ジル:ギャラガー兄弟のポートレートを組み合わせた作品が好きですね。最初にコンピューターの画面でこれを見た時に、左右から覗き見ようとしてしまうくらい立体的で、奥深さを感じました。
もとの写真は広告のためにエアー・スタジオで撮影したものでした。兄弟のふたりがお互いを見つめ合っているところを、それぞれに撮ったんですね。それがまさかひとつの作品になるというのは驚きました。素晴らしい作品です。
河村康輔:そうだったんですね。撮影の背景は全然知らず、写真を見た時に、「これは完全にふたりの目で重なるな」というので作っていて。
――ジルさんの撮影時の情景を、河村さんが見破ったような作品となったとは驚きです。「Champagne Supernova」のジャケットをコラージュした作品についてはいかがでしょうか?
河村康輔:これはもう、僕からしたらすごく馴染みのある写真なんです。だからこそ、元を崩しすぎずに自分の作品に引き寄せられるかという点で、最も微調整に苦労した作品でした。
この写真については、同じ場所、同じセットで二枚のカットがありますが、それでいて全く違うものになるのが本当にすごいなと思っていて。僕はキャンバスまで20cm以上近くに寄って作業をするので、普通とは違う写真との接し方をするんです。どの作品もそうですが、長時間ずっと対峙することで、写真の奥行きや厚みをよく感じられました。
ジル:とても嬉しいです。
――ジルさんは先ほど、音楽家を撮るジャーナリストとして「第一に写真」だと、ある種、写真家の独立性の重要さについて語られていましたね。
ジル:そうですね。音楽写真家として駆け出しの頃、私たちのような立場の人は"スナッパー”と呼ばれていました。つまり現場ではジャーナリストが王様で、カメラマンは最後に「はい撮って」というような扱いだったんです。
ですから、こうしたコラボレーションを経て、私の写真に当初は考えられなかったような新たな価値や重みが生まれたことは、本当に嬉しいです。
……それから、河村さんに質問していいですか?
――どうぞ、お願いします。
ジル:これらの作品は、なぜ4分割されているんですか?
河村康輔:シュレッダーのストロークがA4サイズまでしかないんですよ。だから、縦の長さがA4以上のキャンバスになると、ズレていってしまうんですね。それで何年もやった結果、LPサイズが1番綺麗に出力できるサイズだったので、それを分割して作ることになりました。
ジル:そうなんだ、ありがとう。それから制作過程の映像を見ると、切れ端がキャンバスをはみ出ている段階がありますよね。最終的にはキャンバスに合わせて切っているけれど、はみ出ているのもいいんじゃない?
河村康輔:昔は残したまま出していたんですけど、ある時からなぜか切るようになりましたね(笑)。
ジル:でもたしかに、はみ出ていると制作の過程がわかりやすくなりすぎてしまうかもしれませんね。完成形は謎めいていて、見ていて面白いですよ。
河村康輔:ありがとうございます。
ジル:もうひとつ、作業をしている時はオアシスを聞いていたんですか?
河村康輔:いや、今回はかけなかったですね。やっぱり、ジルさんという写真家と向き合いたいという気持ちがあって、オアシスに引っ張られないよう気をつけたかったんですよね。
――オアシスを架け橋に、それぞれアーティストとして向き合ったコラボレーションになったのだと思います。最後になにか、河村さんから質問はありますか?
河村康輔:いやあ……ただただ緊張していて(笑)。
ジル:ワーオ。ハグしましょうか?
河村康輔:ええっ、お願いします!
Text by namahoge
Exhibition & Interview Photos by Naoki Takehisa