Special Feature
2026.03.09
マテリアルを通して世界と向き合う4作家、その選定とキュレーションの舞台裏――入澤聖明&青木彬インタビュー
2026年2月27日から3月15日まで、New Galleryにてグループ展「Tell me why」が開催されている。国立新美術館で開催中の大型展「テート美術館 ― YBA & BEYOND」から着想を得た企画展だ。YBA(Young British Artists)と呼ばれる作家たちが英国美術を席巻した1980年代末〜2000年代、日本もバブル崩壊や阪神・淡路大震災、インターネットの普及と、社会が大きく変わっていく時代だった。そんな時代に生まれたアーティストたちは、地球環境の変化やSNS、パンデミックや戦争など、ますます複雑化する世界をどのように見つめているのか。様々なメディアを通してその問いに向き合う4組の作家――沖田愛有美、倉敷安耶、藤田紗衣、葭村太一――を紹介する本展について、企画協力を担い、キュレーションを行った愛知県陶磁美術館学芸員の入澤聖明と、インディペンデントキュレーター/社会福祉士の青木彬に聞いた。

YBAから「Tell me why」へ
──今回の展覧会のコンセプトについて教えてください。
青木彬:今回はYBA展から発展していった企画で、日本の若手アーティストのグループ展を作るというところから始まりました。ただ、YBA自体は僕も入澤さんも専門ではないので、今の文脈の中でそのままテーマとして持ってくるのは難しいなと。どういう切り口にしようかと最初は悩んでいたんですよね。
──その中で、どのように切り口を見つけていったんですか?
青木彬:YBAが美術の潮流の中でかなりセンセーショナルな出来事だったとすると、当時の技術や社会状況に対して作品を通して応答してきたアーティストたちのムーブメントだったわけですよね。そう考えた時に、やっぱり今、先が見えないというか、複雑化している社会の中で、アーティストたちはどう向き合っているんだろうということが気になりました。YBA以降、様々なマテリアルが作品の中に現れるようになり、インスタレーションも一般的になってくる中で、コンセプチュアルな方向性よりも、マテリアルを通して社会とのつながりや複雑性を捉え、向き合っている作家たちを一つの切り口にできないかなと考えました。
──タイトルの「Tell me why」にはどんな意味が込められているんでしょうか。
青木彬:本当にシンプルに、世界が複雑化している中で、作品を通して謎を解き明かす……というと理論的に聞こえちゃうんですけどね。今回の作家で言えば、木彫だったり漆だったり、ペインティングだったりやきものだったりで、それぞれの技法や素材を通じて、世界の理を解き明かそうとしていく。そういう姿勢を込められないかなと思って、このタイトルにしたという感じです。

──お二人は普段から一緒に展示を作っている関係なんですか?
入澤聖明:いや、今回が初めてです。
青木彬:だから分担は明確にはなかったですね。結果として四名の作家になった時に、たまたま自分たちが出した二名ずつでうまく分かれたところはありましたが、あらかじめ決めていたわけでもなく。
入澤聖明:タイトルとか文章の大まかな枠組みは青木さんがしっかり決めてくださっていたので、それに合わせつつ協議をした感じでしたね。
──入澤さんは普段、美術館でやきものを中心に扱っていますよね。インディペンデントのキュレーターとの協業はどうでしたか?
入澤聖明:やっぱり美術館にいると、守備範囲をまず優先して、どう手を広げるかという考え方になるんです。インディペンデントでずっとやってこられた方と一緒にやると、私が普段慣れ親しんでいないような作家さんもしっかり選んで来ていただけます。青木さんだからこそ選ばれてきた人たちなんだろうなとは感じましたし、不思議と新鮮味がありながら、すごくいい意味で納得感がありました。
青木彬:僕の場合、普段から一緒にプロジェクトをやる相手が他分野の人であることが多いんですよね。たとえば福祉やまちづくり領域の人だったり、企業や行政の人だったり。アートの専門性を持っていない人との協業は多いんですけど、逆にキュレーターという専門性を持った人と組むのはすごく珍しかったです。入澤さんとのディスカッションの中で、自分が普段出会うことのなかった作家の提案や作品の解釈がすごく面白かったですね。
──コンセプトが先にあって作家を選んだのか、それとも作家のイメージが先にあったのか、どちらでしょうか。
青木彬:今回は作家が先だった気がしますね。YBAというコンテクストの中から、最初は本当にそれぞれ気になるアーティストぐらいから始まったんですけど、こんな人もいるよねと候補を挙げていく中から、テーマやキーワード、タイトルが出てきたという感じなので。
入澤聖明:私の場合だと、倉敷さんと藤田さんを選ばせていただいたんですけども、今回のテーマにも合致するし、自分の中でもリアリティがあるような表現をしている人たちがいいなと。90年代前後の生まれって、まだデジタルネイティブにはなりきれていない中間地点にいる世代だと思うんです。デジタルとリアルの距離の取り方に独特の感覚がある。コンセプト文にもあるような年代感を、肌感覚として持ちながら表現をしている作家が、今回の展示には入ったんじゃないかなと思っています。


