Special Feature
2024.10.18
言葉を超え、コマを超えて癒やしを与えるエイリアン――SIMON個展「ALIEN NEURON」インタビュー
言葉/コマ/海を超える「エイリアンちゃん」
――SIMONさんはこれまで、ニューヨークや福岡、長崎においてパブリックアートに挑戦しています。最近では大分県別府の上人ケ浜公園の野外コートに50mや18mという非常に大きな作品を残していますね。私的な体験に遡ることで生まれたキャラクターが、公共空間に現れるということ自体が面白いなと思います。
僕としては、「エイリアンちゃん」が日常のような身近さで存在していてほしい。特別感は必要なくて、「常に横にいるよ」ぐらいの感覚で。だから、今まで描いてきたパブリックアートも海沿いの場所が多くて、それはすごく嬉しいことなんです。自然と違和感なく調和してくれたらいいなって思います。
――造船所の壁やシャッター、レンガ、バスケコートなど、描かれる支持体もさまざまですね。
そもそも僕には「絶対にキャンバスに描かなきゃ」という固定観念がないんですよ。鉛筆やチョークがあればどこにでも「エイリアンちゃん」を描けますし、場に合わせて即興的に描いていくのが楽しいんです。だから、「これも使えるじゃん」という素材が日に日に増えています。
たとえば今回の新作に使ったターポリンは、去年別府でゲリライベントをやった時に偶然見つけた素材でした。その時はライブペイントをすることだけ決めていて、特に何も画材を持っていかなかった。そんなアバウトな状態でホームセンターに行って発見したのが、ターポリンのシートでした。軽くて持ち運びが楽だし、「これいいじゃん」って(笑)。
―そのスタイルはストリートアーティストのようですね。
でも、僕自身は全然ストリートで育ってるわけじゃなくて、根底は漫画にあります。漫画にしては、かなり自由度の高いことをしているとは思います。それこそキャラクターが原稿から飛び出したというような……コマから勝手に出ていって、ふわーっと、野良猫みたいに自由にそこらを歩いてる感覚ですかね。
――初めての個展「ALIEN POP」(2022年、Chinatown Soup)はニューヨークで開かれていますが、どのような経緯だったのでしょうか?
僕の師匠にあたる人から誘ってもらったのがきっかけです。初めて「エイリアンちゃん」を理解してくれた師匠から「挑戦してみないか」と声をかけてもらったんです。
――その後も台湾やシンガポールなど、どんどん言語の壁を超えていくところが、「エイリアンちゃん」のコンセプトと合致しているように思えます。
どこの土地の方もみんな、小動物を見ているようなリアクションをしてくれるのが嬉しいです。「癒やされる」みたいな、胸がキュッとなるような体験なんだと思います。それは本当にキャラクターの力だと思います。