Special Feature

2026.04.16

路上からキャンバスへ──「Neo-Arts-Revolt」出展作家インタビュー

2026年4月3日から4月19日まで、New Galleryにてグループ展「Neo-Arts-Revolt」が開催されている。Creation(創造)とRevolution(変革)の二語を軸に、ストリート(路上)とスクリーン(画面)という異なる領域を横断してきた5名のクリエイターを集めた企画だ。キャラクターグッズと美術作品との中間的な創作物、スプレー、ポップアートなど、多様な素材と表現が並びつつも、どこかまとまりも感じさせる展示空間が生じている。本インタビューでは、出展作家5名──ハタヤママサオ、Ryu Ambe、中尾舜、silsil、YOHEYY──が発表した作品について、それぞれ話を聞いた。

6色6通りの言葉が並ぶシリーズ──ハタヤママサオ

──本展では「6 wonderful Nicochan」という6枚組のシリーズ作品を発表されています。

ハタヤママサオ:いろいろな表情のニコちゃんに、6色の背景を描き分けて作っています。ニコちゃんがモチーフの作品はいままでも作っていたんですけど、今回はメッセージ性をもたせたいと思いました。そこで1枚1枚に英単語を割り当ててみたんです。黄色のものは「ルミナス」(光り輝く)、灰色は「チェリッシュ」(慈しむ)、紫色は「セレンディピティ」(ふとした偶然から素晴らしい幸運をつかみ取る)、水色は「メリフルアス」(甘く流れるような心地よさ)、赤色は「レジリエント」(しなやかな強さ)、そしてピンク色は「エセリアル」(優美で繊細な様子)です。

──言葉はどうやって選ばれたんでしょうか。

ハタヤママサオ:なるべく初めて聞くような言葉をチョイスしてみました。絵を見た人に、聞いたことのない単語の意味を知ってもらえたら、という。絵は単純で普通に可愛らしいんですけど、言葉の意味を知ったらアンバランスな感じというか、軽さと深さを同時に味わってもらいたいですね。あとはやはり、前向きな言葉をチョイスしたいと思ったのもあります。

──制作の経緯はいかがでしたか。

ハタヤママサオ:1枚ずつ完成させるのではなくて、6枚を同時並行で描いていきました。6枚組になった時の全体のバランスを見ながら、っていうのかな。と同時に、全体を意識しすぎると1枚だけになった時に個々の絵が弱まってしまいます。1枚を飾ってもパワーがあるようにしつつ6枚で過剰にならないように見せるのは結構難しかったです。最終的なバランスというか仕上がりには満足できました。

──ふだんの活動についてもお伺いします。

ハタヤママサオ:「ニュージャパニーズポップアート」を掲げて活動しています。ポップアートも大衆芸術ということで、アートというよりは身近なものって捉えているので、グッズ制作にも注力しています。「身につけるアート」っていうのを大事にしているつもりです。色のバランスや色彩感覚が売りだと思っています。

──国内外さまざまな場所で展示を手掛けられていますよね。

ハタヤママサオ:全国で百貨店を中心にポップアップや展示会をやりながら、海外の7都市(ニューヨーク、ドバイ、パリ、ミラノ、ロンドン、バルセロナ、メルボルン)でも展示を経験しました。大阪には自分のショップもあるんですけど、そこの全面ペイントも手掛けさせていただきました。

──メルボルンでは壁画も描かれていたと。

ハタヤママサオ:はい、先月行ってきました。グラフィティのようなストリートの要素も入れて制作を続けています。

──制作を終えて発表されたいま、どんなふうに感じていますか。

ハタヤママサオ:久しぶりにグループ展に参加しました。グループ展には「罠」があって、それぞれの作家や作品が混じってかっこ悪くなってしまうものがありますし、そういう例をいくつも見てきました。でもこの展示の出展作家は5名で、割に贅沢な空間の使い方になっています。ふだんは大阪で活動していますが、今回は余白が残るところに東京っぽさを感じて、素直にいい展示だなと思いました。アーティストのチョイスの点でもあまりかぶっておらず、ディレクションが効いていますね。


レシートの裏に描く平和の色とは──Ryu Ambe

──今回の新作について、制作の経緯や込めた思いをお話いただけますか。

Ryu Ambe:じつは今年の3月にできたばっかりです。ハートマークをモチーフにしたコラージュ作品で、下地がお店のレシートになっています。昨年末頃からニューヨークで生活していたときにもらったレシートの裏に絵を描き、キャンバスに貼り付けていきました。いつも一年のうち1ヶ月程度は海外で過ごすようにしているんです。滞在先にいるときからレシートを集めては絵を描いていたので、制作期間は滞在期間と重なっていますね。

──「PEACE NEEDS SPACE」という作品名が印象的です。

Ryu Ambe:人種も違う、国も違う、宗教も違う人たちが同じ地球で生きているわけで、それをひとつの平和のイメージにまとめるのは相当難しいことなんだなっていうのを感じたのが制作の原点です。いろんな人種の人や、いろんな考え方や宗教を持ってる人たちを頭の中でイメージして、みんなを一箇所のハートマークに押し込めて、やや窮屈そうな表情も描きました。少し皮肉な意図のある作品になっています。

──平和へのメッセージ性と同時にその複雑さも表現されていて、いろいろな見方ができそうです。

Ryu Ambe:そうですね。自分がやりたいことは全てここに詰め込めたから、わりに満足しています。解釈は見る人それぞれのものであって、「可愛いね」だけでも嬉しいですし。印象としてはいかに明るくポップに見せるかっていうのが僕の中では腐心したところだったので、それは達成できたように思います。

──最初から赤一色だったんですか。

Ryu Ambe:いえ、もともとは人ごとに違う色を当てていて、カラフルな作品でした。いろんな人をイメージして色を塗ったんですけど、まとめたらバランスがぐちゃぐちゃになっちゃって。ちょうどその時、国際ニュースでは情勢の不安定さが叫ばれていて、警告でも赤信号(ストップ)でもあるし、心臓の色でもあるしっていうことで、真っ赤にしちゃえと思って塗りました。

──今作はニューヨーク滞在の成果ということでした。

Ryu Ambe:去年の12月から年明けまで滞在してて、主な仕事としてはブルックリンにあるデリ(飲食店)の壁に壁画を描いてきました。前にも行ったことがあったんですけど、そこのおじいちゃんが僕のこと覚えてくれて、壁画を描くための壁を提供してくれたんです。ニューヨークってキースヘリングの壁画とかもまだ残ってるじゃないですか、そういうのを巡りながら、自分もどこかに残したいなっていう気持ちがあったので、こういうお仕事は嬉しいですね。

──素敵ですね。ただ、旅先で壁画を残すのは結構ハードルが高そうというか、純粋にすごいと感じました。

Ryu Ambe:いや、意外とそうでもないんです。仲良くなった人に「画家です」とかって自己紹介して「描きたいです」って言ったらチャンスくれるんですよね(笑)。メキシコとかタイとかにも描いてきました。最初も触れましたが、一ヶ月ほど現地で過ごすようにしていて、仲良くなった人に持ちかける感じです。

──レシートに絵を描く手法は、普段からやられているんですか。

Ryu Ambe:はい。ライフワークになっています。旅先で得たレシートにフロッタージュして、ZINEにしてるんですよ。もう10年ぐらいやってます。ただ、10年もやると自分で飽きちゃって、ニューヨークの時はコラージュを作ってみようと思いました。ちょうど今回の展示の話もあったので、それに向けて新たな手法で制作できてよかったです。

Exhibitions

「Neo-Arts-Revolt」
2026.04.03 fri - 04.19 sun.