Special Feature

2024.08.10

大きな波に飲まれずに、たしかな関係を喜ぶこと――夜間のみの仮設“展”舗「CCMS experiment OBON」コヤマシゲト&草野剛インタビュー

日本の夏の夜の風景を重ねて

──今回のコンセプトのひとつに「お盆」がありますね。また、夜間のみの開催というのも珍しい取り組みとなっていますが、どのような意図があるのでしょうか?

コヤマシゲト:去年あたりからコロナ明けでイベントも増え、観光客も増えてきたところでお盆休みになにかするとなった時に、日中は暑くて外歩きたくないし、夜だけやる手はないのかというのが真っ先に思いついたんですよね。

それで、夏の夜に街中で煌々と灯りがついている風景というのは、僕が福岡で見た博多祇園がイメージにあります。真っ暗な中に明かりの灯った山車があり、夜店があり、そこにお酒を飲みたいおじさんやカルピス持った子供が集まっていて、これって日本の素敵な風景なんじゃないかな、と思ったんです。

また、僕らのような職業でお盆といえば、締め切りなんですよ。お盆明けの納品に向けて、みんな休んでるのに僕たちだけが汗水垂らして仕事して、っていう辛い気持ちをイベント化してみようか、みたいなところで(笑)。

New Galleryさんがオープンして数回目の展示で「夜だけ」っていうのも申し訳ないんですけど、ギャラリーとして使うんじゃなくて「すいませんお借りします」ってお店をやることが自分たちらしいんじゃないかな、というので、夜店みたいな仮設“展”舗を開こうというのが今回のコンセプトになっています。

──今回のプロダクトとして提灯「むかえび」「おくりび」がありますが、夏の夜に光るイメージとも一致していますね。

(写真中央)どくろ【lamp】

コヤマシゲト:光るプロダクトはこれまでも手掛けていて、草野さんは個人で「おばけちゃん」のネオンサインを発注して、草野剛デザイン事務所に置いているんですよね。それから2016年に「おばけちゃん展」をやった時にも「どくろ」というランプを作って、2023年のニューヨークでもリプロダクトしたんです。なんか、光るものはずっと好きですね。僕はたぶん前世が虫だったんで、光と蛍光色が好きなんですよ(笑)。

草野剛:虫だったんだ(笑)。

コヤマシゲト:僕、虫なんですよ(笑)。甘い蜜もチューチュー吸いたくなるし、光に向かっていって燃え尽きてしまうところも含めて、シンパシー感じますね。でも、光るプロダクトのアイディアはずっとありますね。

草野剛:でも、オバケって現れたり消えたりするでしょ。それで光るものというアイディアはずっとあって。提灯に関してもずいぶん前から提案して、なかなか実現しなかったのが今回やっとできた、という流れだったんです。

提灯「むかえび」「おくりび」は、浅草の吉野屋商店さんに制作をお願いしました。全て手仕事で和紙を巻いて、印刷に見えるかもしれないけれど、一つずつ筆でレタリングしているんです。丁寧な仕事ですよね。これが江戸時代には懐中電灯のような消耗品だったわけで、制作費もすごく高いわけではない。職人さんの手仕事と考えれば、全然安いくらい。でも、今の時代だと年に数回の祭事に作られるのがほとんどです。

そこで、もしかすると提灯を現代的に再解釈できるかもしれないと考えて。同じ型で、同じハードウェアなんだから、グラフィックを差し替えれば、実は誰もが参加しうるメディアとして機能するんですよね。ロゴやサークル、会社の名前を示すような。僕は個人的にAphex Twinのロゴを入れて家に飾ろうかなと思っているけど、みんな気軽に発注していいはずなんですよ。

(写真左から)吉野屋商店×CCMS 提灯『むかえび』(おばけちゃん目)、吉野屋商店×CCMS 提灯『おくりび』(リサイクル)【提灯】

Exhibitions

CCMS experiment OBON
2024.8.10 sat ‒ 2024.8.18 sun