Special Feature

2026.10.11

漫画をルーツにキャンバスに描く、エイリアンちゃんのいる世界――AOISIMON個展「COMIC WORLD」インタビュー

福岡在住のアーティスト・AOISIMON。かつて漫画家を志した作家が描く「エイリアンちゃん」は、大きな瞳と触角を持ち、人種も国籍も性別も持たないキャラクター。言葉を介さず癒やしを与え、あらゆる実存を肯定するこの宇宙人は、2年前の個展「ALIEN NEURON」でNew Galleryに現れた以降も、福岡、京都、バリ島と各地を渡り歩いてきた。同ギャラリーで2度目の個展となる本展「COMIC WORLD」は、立体作品をあえて外し、絵画を主として構成された。キャンバスという惑星に降り立ったエイリアンちゃんの現在地を探るべく、AOISIMONにインタビューを行った。

ストロング・スタイルな絵画作品で

――前回のNew Galleryでの個展(2024年10月)でもインタビューさせていただきました。その後も一貫して「エイリアンちゃん」の制作を継続されていて、コンセプトのコアな部分はずっと変わらないのだと思います。なので、今回はその表現がどう変化・発展してきたのかを伺えたらと。まず変化というと、今年「AOISIMON」に改名されましたね。

AOISIMON:以前の「SIMON」だけの名義だと、あまり血の通った人間性が感じられないところがあったのかなと思っていて。小さな変化ではあるんですけど、僕の本名が「アオイ」というので、親しみのある名前に変えようと。

実は、僕の漫画家時代のペンネームが「アオイシモン」だったんです。今年の個展タイトルが「COMIC WORLD」であるように、僕自身のアイデンティティは漫画です。育ってきた環境も、影響源も、全てが漫画。だから漫画家時代の名前に戻すのは、原点に帰るという意味もありました。

――福岡OVERGROUNDに始まり今回の個展にも冠された「COMIC WORLD」は、そのルーツを示すタイトルですね。

AOISIMON:そうですね。僕は漫画で育って、漫画家に憧れて、漫画家になろうとしたけど、ドロップアウトしてしまった人間です。漫画はある種の永遠の憧れなんです。そんな自分から生まれたのがエイリアンちゃんなので、題名も「COMIC WORLD」がいいだろうと。

――今回のNew Galleryの個展では、これまでの「COMIC WORLD」にあった立体作品が外されました。ペインティングを主体に展示するというのは、一体なぜでしょうか?

AOISIMON:僕にとってペインティングは、ストロング・スタイルな表現だと思っています。純粋に絵画を展示することで、まっすぐ受け止めてほしい。そんな希望で、今回は絵画作品だけにしてもらいました。

これまで立体も作ってきたけど、僕は基本的にペインティングに魂をかけている人間です。漫画にルーツがあるので、絵画作品もすごく記号的で簡単そうに見えるんですけど、実物を見たらディテールの細かさに気づくと思います。だからこそ、本当に、ゼロ距離で見てほしいという思いが強くて。来てくれた人には必ず「よかった」と言ってもらえる作品を目指しています。

――2年前のインタビューを読み返したら「絶対にキャンバスに描かなきゃという固定観念がない」と仰っていて。

AOISIMON:それは今でも変わらないです。壁画でもなんでも描けるものには描きたいし、今後も立体作品を作っていくと思います。

ただ、この2年で起きた変化もあります。海外での展示を重ねていくなかで、向こうの方々が大きな絵画作品の精度をすごく大事にされているということに気づいて、僕自身も意識しはじめて。それでキャンバスにより向き合うようになりました。

――今回は展示されませんが、「最後の晩餐」を題材にした「ALIEN last supper / blue」(2025)は、横5mほどの大きな絵画作品ですね。絵画の伝統に対するアプローチであり、今のお話に繋がるような挑戦的な作品なのだろうと思います。

AOISIMON:そうですね。これはニューヨークにミュージアムを持っている方から「描いてほしい作品がある」と依頼された作品でした。ここで初めて、スプレーを使わずに絵画を描くという実験をしたんです。今までスプレーで速く塗っていたところを、全部アクリルで丁寧に塗る。丸々1カ月かかりましたが、「アクリル絵の具ってすごく楽しい」ということに気づきました。

また、これが「COMIC WORLD」の展示作品にも繋がっていて。今回、パターンを描いた作品がいくつかありますが、これは「Last Supper」で初登場したモチーフなんですよ。

見えづらいんですけど、「Last Supper」は背景がパターンになっています。大きなキャンバスに手描きでパターンを描いていって……「好きに描いていいよ」と言われていて、自分で自分の首を絞める作業だったんですけど(笑)。

Photo by Ittoku Kawasaki

――どうして背景にパターンを描こうと思いついたんですか?

AOISIMON:シンプルに、背景になにも描かれていないと絵が持たないんです。それで自分でパターンをデザインして、背景に描き込んでいきました。漫画にスクリーントーンを貼る感覚ですね。

――絵画作品の精度を高める技法として、漫画家的な発想で背景にパターンを描き込んだと。

AOISIMON:はい。パターンのデザインをする際も、子どもが見てパッとわかるような「お花とキラキラ」にしました。これも商業漫画で培った考えですけど、子どもが読める漫画は大人もわかる、という発想ですね。

「ALIEN NIGHT SKY」

――言葉を介さずに伝えたい、というのはエイリアンちゃんというキャラクターに込められた哲学と一致しますね。

AOISIMON:「わかる人がわかればいい」というより、ファミリーが安心して見られる作品にしたい。その思いはこの2年間でより強くなった気がします。

Exhibitions

AOISIMON – COMIC WORLD
2026.10.02 Fri - 10.18 Sun