Special Feature
2026.10.11
漫画をルーツにキャンバスに描く、エイリアンちゃんのいる世界――AOISIMON個展「COMIC WORLD」インタビュー
エイリアンちゃんに魂を込める技法
――今回、特に目を引いたのはメタリックなエイリアンちゃんを描いた「Silent Birth」シリーズでした。この作品を描いたきっかけを教えてください。
AOISIMON:きっかけは日常的なことで、アクセサリーショップでキラキラしたものが並んでいるのを見ていて、「この質感でエイリアンちゃんを描いたらどうなるかな」と思ったのが最初です。それで去年、ショートアニメを作っていた時期に試してみたら、見てくれた方から「キャンバスに描いてみたら」と言われて。
今までのエイリアンちゃんって、すごく漫画的で、平面的ですよね。それが質感を持つ半立体になるだけで見え方が一気に変わるんです。メタリックな素材との相性もいいキャラクターですしね。でも、アクリルで描こうとしたら難しくて……これはかなり苦戦して、この表現に至るまで1年かかりました。

――メタリックになることで、普段は親しみのあるエイリアンちゃんが神秘的にも映ります。輪郭のはっきりした漫画表現から離れつつ、空山基さんの作品を彷彿とさせるような印象もありました。
AOISIMON:もちろん空山さんの作品はインスピレーションのひとつです。だけど、空山さんの表現は反射を意識されているんですよ。僕の場合はどちらかというと、光を吸収するようなイメージ。エイリアンちゃん自体が包み込むようなキャラクターなので、ビカビカに反射させるのではなく、ぼやっと曇りがかったような優しい光を表現しました。
――他の作品についても伺っていきたいです。今回最も大きな作品として、「MARS / EARTH COMIC WORLD」がありますね。これはパターンではなく、アクリルの飛沫が全面に散らされています。
AOISIMON:高校時代に大分のコレクション展で、ジャクソン・ポロックのアクション・ペインティング作品を見たんですよ。その作品がすごく大きくて、印象に残っていて。真似しやすそうで真似できないな、とか高校生ながら思っていました。
実はアクション・ペインティングのような表現って漫画にもあるんです。たとえば、ホラー漫画の血しぶきがそうですね。今回は、そうした表現がグロテスクにならないように実験しました。ポロックみたいにビシャビシャと飛沫を散らすのではなくて、上から雨のように垂らして、いろんな色を使いながら優しさを表現したつもりです。

――また、吹き出しも今回の新しいモチーフとして数多く登場します。これはどういう意図があるのでしょうか?
AOISIMON:漫画における吹き出しって、キャラクターに命を込めるツールだと思っているんです。言語だけでなく、デザイン的な側面から「このキャラクターは何が言いたいんだろう」というのが伝わるじゃないですか。
今回はハートを呟くエイリアンちゃんの作品がありますが、これがビックリマークだったら絵の印象がガラッと変わる。すごくシンプルだけどキャラクターの印象を左右する表現方法だと思うんですよ。歴代の漫画家さんは本当にすごいなと思いながら、今回吹き出しを使ってみました。

――吹き出しは現代美術ではポップアートの文脈もありますよね。この2年間で絵画表現のさまざまな試みをされてきたのだと思います。そんななかで、制作にあたってご自身で感じる変化はありますか?
AOISIMON:変化ですか……フェスや個展、アパレルブランドとのコラボ、バスのラッピングなどいろいろやらせてもらって、自分のキャラクターへの愛着もより湧いてきました。そのなかで、色が増えて、色味が明るくなった。2年前は黒やグレーを主に使っていたんですよ。
――たしかに、よりポップになった印象があります。色彩が変化した理由は?
AOISIMON:ごく自然に増えていったんです。もしかしたら年齢のせいですかね(笑)。プライベートの心境の変化もあるかもしれないし、意図して変えたわけではないんです。
ただ、この2年で描く頻度がすごく増えて、発表する場所も少しずつ増えたんです。そこで「新しい表現を」という気持ちは少なからずあったかもしれない。変わりたい部分と、変わりたくない部分があって、そのうち変えられるのが色だったのかなと。
それと今年は海外での展示が多かったんですよ。いろんな国の文化に触れて、その土地の色彩にも影響を受けているのかもしれないですね。
