Special Feature

2026.11.06

あの頃飾れなかったピンナップを――​​Ferdi(フェル)個展『NEO PIN-UP: TOKYO』インタビュー

「ピンナップ+なに?」を探求する

―LPジャケット風のエディション作品は、昔の日本のシティポップのような雰囲気がありますね。

フェル:僕がヴィンテージな雰囲気に惹かれていることは、たぶん伝わっていると思います(笑)。LPサイズの作品だけでなく、ポラロイド写真サイズのポストカードを作ったのもそういう趣味からです。

僕は作品を「一点もの」「エディション」「グッズ」の3つの区分で考えていて、LP作品はエディションにあたります。LPサイズにしたのは、日本の小さな部屋でも飾りやすいからですね。

Ferdi「SEE THROUGH YOU」
Ferdi「SPIDER LILY」

―レコードもポラロイドも、言われてみればピンナップ文化のひとつかもしれません。

フェル:そうですね。グラフィックデザイナーっぽい考え方ですけど、僕の中では「Neo Pin-Up」という大きなブランドの中に、小さなブランドをいくつも考えているんです。このLPシリーズは「Off the Record」。キャラクターとの「オフレコ」の関係という意味と、本当にレコードが入っていない、レコードが「オフ」だという意味を掛けています。

隣に展示されている「のぼガールズ」も同じように「Neo Pin-Up」のなかのブランドのひとつ。昔のピンナップにはテニスをする女性の写真などもあったから、スポーツと相性がいいんですよね。そこで、いま僕がハマっていて、現代らしいスポーツとしてボルダリングのキャラクターを作りました。

―「のぼガールズ」はどことなく「コップのフチ子さん」のようなキャラグッズを想起させて、そういえば、フチ子さんも日本のピンナップと言えるのかもと思ったんですよね。

フェル:わかります。実は「のぼガールズ」は1ヶ月ほど前に作ったキャラクターなんですが、ネットでの反響が大きくて。「東京で展示するなら見たい」という声があったので、今回展示することにしました。前のイベントでボルダリングジムの壁に飾っていたので、少し汚れがついているんですけどね(笑)。

―今日お話を聞いて、あらためて「ピンナップ」にはさまざまなバリエーションがあり、日常に溶け込んでいるのが日本の社会なんだなということを再認識しました。

フェル:そうですね。日本は、ピンナップが無意識のレベルでたくさんある国です。漫画やアニメ、イラスト、グッズまで、世代を問わず、みんなが当たり前に楽しんでいる。僕が日本に来て、もう一度描き始められたのはそんな社会だったからだと思います。

―ちなみに今年8月に開かれたインドネシアでの個展では、どんな反響があったのでしょうか?

フェル:えーっと、まず18歳未満は入場禁止でした(笑)。それでも反応は意外とよかったです。面白かったのは、イラストレーター仲間が何人も来て、「実は私も、アダルトなイラストを描くセカンドアカウントを持ってるんだ」と打ち明けてくれたこと(笑)。

人間だから、エロスに惹かれるのは自然なことだと思うんです。自由に表現できない環境でも、みんなそれぞれどうにかやっているんですよね。

―なるほど……「Neo Pin-up」は、本当はフェルさんが十代の頃に部屋に飾りたかった作品なんじゃないかと思っていて。

フェル:ハハハ、それはそうかもしれないですね。

―最後に、今後の「Neo Pin-Up」シリーズの展望を教えてください。

フェル:今回だったら、インドネシアの伝統、レコードジャケット、スポーツなどがありますが、僕は「ピンナップ+なに?」を考えるのが楽しいんです。

そのとき自分の人生でなにが起きていて、なにに興味があるのか。それをピンナップと混ぜたらなにが生まれるのか。表現の方法も、内容に合わせてその都度一番いいものを選んでいきたいし、新しい技術も取り入れていきたい。いろんなものをミックスして新たな作品が生まれることを、僕自身すごく楽しみにしています。

Text by namahoge
Photos by Naoki Takehisa