Special Feature
2026.05.19
描かれながら息をする――窪塚愛流個展『MeMonsters』インタビュー
表情を増やしていく生き物たち
―今回の個展では、ここ4,5年で描きためた作品が展示されます。この生き物たちは、どういう世界に生きて、どのように暮らしているのでしょうか?
窪塚愛流:そもそも完成された生き物ってわけでもないんです。一つの絵は、その一つの絵だけの世界観で生きている感じです。
―設定があるわけではなく、描くプロセス自体が、ひとつの世界観になっていくというイメージですか。
窪塚愛流:そうですね。たとえばメガネをかけた人の絵があるじゃないですか。これは最初、友達の顔をそれっぽく描いてたんです。そうしたら「ちょっと待てよ、全体で顔になれるんじゃない?」と思って。全体で目があって、髪の毛があって、口があって……ちょっと引いてみたら、全体が顔になって。

これもキツネの顔を描いていたのですが、尻尾を描こうと思ったら「あ、これ猫にもできるな」と思って、猫の顔にしたんです。そもそも描く時に「ここが目」って決めつけてないんです。あとから見て「これ、目っぽいな」みたいな。見る人によっても色んな見方ができると思います。
僕にとってはこう見えるけど、他の人からすると別の見方ができる。僕の絵には意図もメッセージも無いんです。

―描くプロセスから、絵が多面的になっていくと。ちなみに絵を描き始める時、モチーフはどう決まるのでしょうか?
窪塚愛流:その時の気持ちです。思うままにって感じで。今回、泣いてる生き物もたくさんいるのですが、本当に泣いてる時に描いていたりもします。それに、水って自由で描きごたえがあるから好きなんです。
―キービジュアルには猫が描かれていますが、猫については?
窪塚愛流:たしかに、猫は好きです。犬は簡単にイメージを描けますが、猫ってどこから描いてもバランスが取れないから難しいんです。あと、最近描くのにハマっているのは龍と花。難しいのですが、描き応えがあって、描いてる中でだんだん膨らむから好きです。バランスが崩れるのもまた楽しいんです。

―先ほどポケモンの話もありましたが、ご自身が描く造形に、なにか影響を与えている作品はありますか?
窪塚愛流:うーん、ないですね。ポケモンはキャラクターとして好きですが、インスピレーションを受けたわけではなくて。モデルもなにもない、全部自分の世界観でやりたいです。
―たとえばイラストレーターやアーティストなどの作品で、憧れる人はいますか?
窪塚愛流:他の作家さんのことはあんまり知らないのですが、いま空山基さん展覧会のアンバサダーをしていて、先日会場で作品を実際に見させてもらって、本当に痺れました。初めてでした、絵を見て身体がビビビビって痺れる感じ。もう、ハンパないなって。でもそれは自分が絵を描くのとは別で、ただ「ヤバいな」っていう体験でした。
―では、無意識のうちに惹かれる造形などはありますか?
窪塚愛流:歌舞伎の舞台の背景にある雲とか、「ゲゲゲの鬼太郎」の火の玉とか、ぐるぐる渦を巻いた日本的な表現ってあるじゃないですか。ああいうのはすごく好きで、尾上松也さんから歌舞伎にご招待いただいて以来、自分でも描くようになりました。
