Special Feature

2024.04.11

デジタルは「嘘」じゃないと気付けた──nina初個展「AfterBirth」インタビュー

「AfterBirth」:生身のグロテスクさに、SNS的なフィルタをかける

「AfterBirth」:生身のグロテスクさに、SNS的なフィルタをかける

──キービジュアルにもなっている「AfterBirth」と、対になっている「stuck in place」について教えてください。

「stuck in place」は自分のなかで、個展の準備を進めていく上での鍵となるビジュアルとしてイメージが固まっていました。1月ぐらいにはすでに描き上げていたと思います。特に今回は個展のテーマを表すためのモチーフとして内臓を使いたいと思っていたので、それをまずはアニメーションにしてみようと。動かしてみると、より「生きている」感覚だったり、空間の存在感みたいなものが表現できると思ったので。

「AfterBirth」については、自己と他者の境界が曖昧になっている人間の姿を描こうとしました。SNSなどを通じて、「大量の文字情報」として人間を感じることが増えていて、そんな中で生きていると、身体を持った自分という存在を忘れそうになることがあると思うんですよね。

──「自己と他者の境界が曖昧になる」と聞くとネガティブな感じもありますが、描かれている絵そのものは、肯定的でも否定的でもない印象です。

そうですね、どちらかに寄りたくはないと思っていました。「ただ美しく描きたい」というのが一番強かったのかもしれません。そういう現代に生きる存在を、きれいに均質に切り取りたい。なので、内臓的な表現についても、リアルな血の色というよりはちょっとマゼンタがかった色調にしてみたりしました。

──登場人物の目がハートになっているのも印象的です。

ハートは最初から意識していたわけではなく、描くなかで自然にこうなっていきました。4人の女の子が溶け合うように重なっているけど、実は自我を持っているのは中心の子だけ。ほかの3人は周りを取り囲んでいる、生きているか死んでいるかわからないゾンビみたいな存在。そんな風に捉えていて、そのコントラストを強調するためにハートにしました。

油彩画:「偶然」の質感を愛する

油彩画:「偶然」の質感を愛する

──大きな油彩画が3枚配置されています。油彩画は初挑戦と伺いましたが、なぜ描こうと思われたのでしょうか。

展示構成を考えている時に、一番大きな壁が丸々空いていて。最初は、デジタルでプリントしたものにペインティングして作品として仕上げようと思っていたんですが、せっかくフィジカルに寄せた表現をするなら、そちらに振り切った方がいいだろうということで、油彩に挑戦することにしました。興味はあったものの、完全に初めてだったので、油彩画の作家さんに教えてもらいながら描いていきました。

──挑戦してみた感想はいかがですか。

意外と自分に合っているなと思いました。アクリル絵の具と水彩画は取り組んでみたことがあるんですけど、あんまり得意ではなくて。すぐ乾いてしまうので、頭の中で完成形をしっかりイメージしてから、計画的に塗っていかないといけなくて、その作業が自分には合わなかったんです。でも、油彩はどんどん上から塗り重ねていけて、自分がいつも描いているドローイングにより近い感覚でした。

──3枚の作品について、どのように描かれたのか解説をお願いします。

最初に描いたのが真ん中の赤い絵です。これはキービジュアルと呼応していて、女の子たちが身を寄せ合い、ひとつに溶け合っていくようなイメージで描いています。

次に描いたのが右の青い絵で、いつもデジタルで描いているような感じで、ひとりの女の子にクローズアップしています。

1枚目は、教わった油絵のセオリーに則って、鉛筆で下書きを取ってから描き進めています。2枚目の方は、普段自分がデジタルで描くのと同じように、最初から濃い線で輪郭を取って、そこから面を塗っていくというやり方を試しました。

2枚目の方が、デジタルっぽい感覚で描けた気がします。最初から形を決めて塗っていく感じ。1枚目の方が、絵の具の重なりとか偶然性が出る描き方だなという違いは感じましたね。

──青い作品については、液体のような表現も特徴的だと思いました。

ドローイングの方に展示してある「Hedoro」というカラーの作品があります。先ほども話に出たツノの生えた女の子の絵ですね。それとリンクさせるイメージで、「Twin Hedoro」とタイトルをつけました。その名の通り、ツインテールの部分が溶けて体の一部のようになっている感じを目指しています。ちょっと毒々しい雰囲気を残したいなと思って、絵の具の垂れ具合なども意識して描きました。

──左の黄色い絵についてはいかがでしょうか。

これは3枚目に描いたもので、他の2枚との組み合わせを意識しました。2枚目の子が真っ直ぐこちらを見つめているので、この子はちょっと目線を逸らしたポーズにしています。このころにはだいぶ油彩のコツも掴めてきていて、絵の具の重ね方や混ぜ方がわかってきたところでした。黄色と緑を重ねているところなんかは、そうした油彩っぽい表現を意識して使っています。

──デジタルで描いたものと、油彩で描いたものの違いは感じますか?

かなり違うと思います。絵の具が垂れたり色が混ざったりと、自分の意図しない偶然的な表現が自然に生まれてしまうんですよね。でも、そういう崩れもむしろ愛せるなと思っていて。デジタルだと、ついクオリティの高さばかり追求しちゃうんですが、もっと自由に遊んでもいいんだなって。

──油彩は今後も続けていくのでしょうか。

そうですね、油彩はやっぱり物として圧があって良いなと感じるので、次はもっと大きい絵を描いてみたいです。

nina
@Ittetsu Matsuoka

Exhibitions

nina 『AfterBirth』
2024.3.14 thu - 2024.4.21 sun